Dua Lipa『Club Future Nostalgia』

Album

 今作はデュア・リパによるアルバム『Future Nostalgia』のクラブ・ヴァージョン、つまりDJたちによるリミックス集。『Future Nostalgia』自体、きっちりとしたハウスの作法ではなくともダンス・ミュージックを意識した作りになっており、まるでレディ・ガガがダンス・ミュージックのやり方をポップスのフィールドに落とし込んで実際に10代が狂乱してしまったように、デュア・リパもそんな流れを歩みスターになったのではないかと思う。

また、今作はなんとなくケシャによる『I Am The Dance Commander + I Command You To Dance』とも同じ流れに思えて仕方がない。このアルバムも当時10代のスターだったケシャによる代表曲のリミックス集だが、ジェイムス・ブレイクを発掘したUKの超重要レーベル[Hemlock]のオーナーであるアントールドがTikTok」をリミックスしていたり、ジャスティスやダフト・パンクなどを語る上で度々言及される[Vulture Music]のフレッド・フォークが参加していたり、明らかにポップスターとその組み合わせはおかしいじゃないか、というちぐはぐな構成になっている。

実際ケシャのリミックス集はプロデューサーとか周辺の関係者がアントールドと大学の知り合いのつながりで声がかかったというなんとも運命的な話なのだが、それで爆発的にヒットした「TikTok」というポップソングをロンドンのアンダーグラウンドシーンを代表するような男がリミックスをして、しかもまったくポップスには寄せずに自分のサウンドを披露してしまっている。なんというか両方の個性が喧嘩してどちらも得していない感じ。

 しかし、デュア・リパのリミックス集に話を戻すと、こちらはそうちぐはぐとも言えないのが面白いところ。むしろここまで色とりどりで癖のある面々をうまくまとめてそれぞれのリミックスも非常にクオリティが高い。DJからはムーディマン、ラリー・ハード(ミスター・フィンガー名義)などのレジェンド陣にはじまり、韓国のイェジ、ジェイダGやブレスド・マドンナなど飛ぶ鳥を落とす勢いの超新星まで幅広く、それだけでお腹いっぱいのはずなのに、マスターズ・アット・ワークだっているし、ミッドランドだっている(やりすぎ……?)

そんな人選にマーク・ロンソンやケイトラナダなどクラブシーンと馴染みがありつつポップスにおけるキーパーソンもきちんと招聘、このへんはさすがというべきか抜け目ない感じ。

 肝心の楽曲は特にムーディマンによる「Break My Heart」のリミックスが素晴らしい、原曲は隙一つみせない完成されたポップソングといった趣だが、これがデトロイト・ハウスのパイオニアにかかればポップスのクリシェを打ち壊すかのごとく粘っこいリズムに様変わり、人々の会話やグラスの当たる音、それらパーティの喧騒をキャッチしたサンプリング、さらに音の抜き差しとフィルターの使い方によってテンションを作り上げていくテクニックには脱帽。ムーディマンの強すぎる個性をもってして原曲をさらに際立たせるという稀有な例、ちょっと頭一つ抜けている。

またラリー・ハードによる「Hallucinate」のリミックスも聴き逃せないクオリティ、”deep stripped mix”と名付けられている通りディープに仕上げられており、さすがはResident Advisorで”ハウスをディープにした張本人”と喧伝されていることだけはある、今や”ディープ”という言葉は非常に使い勝手の良い接頭語に成り下がったが、ゴッドファーザーである彼の楽曲を聴くことで、今一度”ディープ”とはなんたるかを思い知らされる。

もちろん女性陣も同じく半端じゃない仕事をしている。ブレスド・マドンナによる「Levitating」は、マドンナとミッシー・エリオットが招聘されるなど今作で最も豪華な楽曲。またイェジによる「Don’t Start Now」は原曲の跳ね具合と引き換えに彼女のシグネチャーともいえるヒプノティックなヴォーカルサンプルと見事に合わせ、そしてジェイダGによる「Cool」はパーカッシヴなビートにデュア・リパのボーカルをチョップし、新たな展開を作り出し、特に後半はノンストップ。

 別段ケシャのリミックス集を失敗と形容するつもりはないが、やはりデュア・リパの今作はケシャとの同様の出来事と感じつつも、その人選や完成度どれをとってもデュア・リパが何枚も上を行く、まさに2020年にふさわしいクオリティを持ったポップス・ミーツ・クラブなアルバムといえる。単純にデュア・リパの作品として成功させるための抜け目ない人選だったであろうが、ここまで豪華でかつフレッシュさも感じられる面子を用意できるのはやはりメジャー資本のパワー。ハウス・ミュージックのみならず、少しアングラなクラブサウンドの良い橋渡しになるのではないだろうか。

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