If EDM had been created in the 1970s, it might have sounded like Escapades
https://pitchfork.com/reviews/albums/gaspard-auge-escapades/ Text by Ben Cardew
「もし、EDMが1970年代に作られていたら、『Escapades』のような音だったかもしれない」。よし、ピッチフォークによるこのフレーズがとても共感できたので、そのまま引っ張ってきてしまおう。僕は2曲目の”Force Majeure“を聴いたときに、ジャスティスが帰ってきた思った。サウンド面ではジャスティスの名盤『Cross』における汚れきった歪みより、2nd『Audio, Video, Disco』や3rd『Randy』に近いような音のテクスチャを思わせる。そして、短期間でレコーディングを終わらせたことが、あるいはソロで制作したことが功を奏したのか、42分間のあいだのなかにはテンションがぶち上がる瞬間もあり、感傷的な瞬間もあり、ジャスティスとしてはとくにセカンド以降、勢いや思い切りのよさの部分でなにか足りない部分があったと感じていたので、今作ではその穴がしっかり埋められた作品に仕上がっている。
ギャスパー・オジェがジャスティスとしてマーシャルの壁を作りライヴをやり、DJではT-レックスのようなロックをスピンし、あるいはピンク・フロイドの『Live At Pompeii』に着想を得た映像作品を制作するなど、彼(ら)にとって60〜70年代の音楽が重要な参照元となっていることはあきらかだが、今作でもそれは変わらない。わかりやすい上昇とクライマックスが用意された曲の構造は、EDMめいたビルドアップ&ドロップの定型を思わせるが、EDMがルーツとするものがヨーロッパにおけるトランスなどのダンス・ミュージックに対して、『Escapades』ではプログレ、ゴシック調のハードロック、あるいはビートルズのようなロック……それらをフランスのエレクトロニック・ミュージックの文脈へと落とし込んでいる。ジャスティスとやっていることは正直変わらないのだが、多くのファンが待ち望んでいたサウンドは、まさにこれであったはずだ。