the reflex『73 tracks bumper pack』

Album

 リエディットはなかなか奥が深い。ある曲を壊して組み替え追加し、そしてまだ聴いたことのない音へと変えるという行為はクラブミュージック・シーンにおいて——それがDJユースのための機能的な理由であれそれなりの役割を果たしてきたはずだ。オリジナルをリリースする有名DJがリエディット専用のエイリアスを作っていたりもしくはリエディット専科のストイックなレーベルだってある。周知のクラシックが誰かの手によって新たな息を吹き込まれることもあればとっておきのオブスキュアな曲をハウスあるいはテクノの踊れる音楽へと落とし込んでリスナーを驚かせることもある。

と、ちょっと偉そうに書いてみたのだけれど、純粋に中古レコード屋で手頃なリエディットを漁るのにハマっているだけだ。アートワークは不要と言わんばかりのスタンプラベルという無骨な装いで、だいたいそういうのはシャーデーだのエリカ・バドゥだの、あるいはビリー・アイリッシュ(ほんとうにあった)といった曲にご丁寧な四つ打ちを乗せている(そして多くはミニマルなんだよなぁ、なぜなんですか) そんな12インチにここ最近は執心しているわけであります。

 そんなわけで今回は、YouTubeで異様な再生回数を記録、さらにあるメディアでは”Disco-Edit King”(ディスコ・エディットの王様)なんて触れ込みをされてしまうくらいのリエディット職人を紹介しよう。ほんとうは集めている12インチをすこし紹介しようかと思ったけどこういうリエディットはライセンスの関係をクリアをするのが難しいのか、Unkown Artistの一点張りで情報が少ないので(笑)

今回ご紹介するthe reflex(以下”リフレックス”)ことニコラス・ロージエはフランスを出自としロンドンを拠点に活動するDJであり、リエディットの職人だ。

彼がリエディットという手法でポピュラリティを獲得しているのはなにもYouTubeやメディアだけの話ではない。まずジャイルズ・ピーターソンが彼をがっつりフックアップしたし、ディスクロージャーやジョリス・ヴォーンをはじめとしたDJから、レジェンド級のデイヴ・リーやディミトリフロム・パリがフックアップないしはメディアで言及している。そして驚きなのはリフレックスがリエディットしたアーティストたち、たとえばナイル・ロジャースやジョルジオ・モロダー、果てはノエル・ギャラガーのようなロックスターまでもが彼にラブコールを送っている。

リエディットと言っても”いい”ものはたくさんあるはずだ、なにも数々の大物ミュージシャンやプロデューサーが一挙にリフレックスにリスペクトを送るのは異様にも映る。しかし、アヴァランチズの名盤『Since I Left You』がリエディットと同様に”引用する芸術”とでも形容したくなるサンプリングという手法を使い、元ネタのマドンナに”素晴らしい”と言わしめたこととちょうど同様に、リフレックスがリエディットによって元ネタのミュージシャンたちに賞賛されるという事実は、やはり彼のリエディットが素晴らしいということのひとつの証明になるのではないか。

 ちなみにマイケル・ジャクソンからは「ABC」と「Rock With You」をサンプリングしているが、こちらも後者の作曲者であるロッド・テンパートンもご多分にもれずリフレックスを気に入っているらしい。自分がリフレックスを初めて聴いたのはアースウィンド・ファイアーによる永遠のマスターピース「September」のリエディットであるが、こちらもMJのリエディット同様、聴き逃せないクオリティだ。

 一連のリエディットは”The Reflex Revision”と銘打たれているので、精密に言葉を期すならば彼のアプローチはリエディットではなく”Revision”(リヴィジョン)ということになる。この手法はオリジナルのマルチトラックをソースとし、それらのトラックから音を組み替えて新たに作りあげる。それはオリジナルのマルチトラック”のみ”を使用して曲を作り変える点が、様々な音を追加しながらときにはDJユースへと様変わりさせる他のリエディットとは大きく異なる、もしくは一線を画すところだ。

そう考えるとなるほど、彼の楽曲は原曲をおおきく変えるようなアクロバティックな作りというより、むしろディティールにこだわりよりダンサブルするための細かなエンジニアリングやアレンジメント的性質が強いように思える。

〈Bandcamp〉では彼のリヴィジョンがお徳用セット(?)になってリリースされている、もちろん以上に紹介した楽曲は全て含まれている。ディスコ、ファンク、ソウルが好きならばぜひ。

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