今回ご紹介するのはコウジ・オノのデビューEP『Incognito EP』 名前からも察しの通り日本人ですが、日本在住の日本人ではなくどうやら日系フランス人ないしはパリに在住する日本人だと思われます(あまり情報なし…) というわけでそのサウンドも無論、ジャパニーズ・ハウスではなくパリのディープ・ハウスの作法に沿った上品なもの、おそらくプレイヤーであろうことを感じさせる鍵盤のプレイはメルボルンのハーヴェイ・サザーランドとの連関をも感じさせるような、メロウかつブギなシンセ・ディスコ、ディープ・ハウスに仕上がっております。今作はパリの[Chuwanaga]からリリースされましたがこちらはセイント・ジェイムズとクレメンティンによって2017年に設立されたレーベルで、もともと過去のスムースなブリット・ファンクのリイシューやコンピレーションを専門的に手掛けていましたが、コウジ・オノを先鋒に新たな才能をフックアップしてきました(といってもまだ彼のみですが) 当たり前ですが今作を気に入ったならこのレーベルも同様に要チェック、特にWorldwide FMでの1時間に及ぶミックスは彼らの愛する音楽がきっちりまとめられており間違いない。
今作はその4曲全編に渡ってメトロ・エリアやブリット・ファンクの影響を多分に受けたクラブユースなディスコブギ、ディープ・ハウスに仕上がっておりますが、ただ無邪気に楽しさのみを追求した音楽に終始していない点が面白いところ。跳ねるようなビートにファンキーなカッティング、そして波を打つようなシンセの抜き差しは非常にダンスミュージックと親和性の高い要素で溢れているが、全体に横たわっているのは日本人らしい瞑想的な感覚、3曲目「Odoru」や4曲目「Momoshima」など明らかに日本をイメージした楽曲が後半では続くことからも、フランス人ながら彼の愛する音楽とルーツである日本を時折リンクさせていることは間違いありません、その点がよもや快楽主義に陥るディスコ、ハウス・ミュージックと彼の音楽が一線を画する大きな理由ではないでしょうか。