過去にはオーヴァーモノ、ジャイ・ポール、ジェイミー・XXなど、さまざまな才能たちを紹介してきた〈XL Recordings〉の名物、「House Bag」シリーズ。今回のLSDXOXOによる『Dedicated 2 Disrespect』はなんとなくスルーしていたのだが、BBC Radio1においてジョイ・オービソンが終盤に”Mutant Exotic“をスピンしていたとき、あるいは、『Mixmag』誌においてカヴァーを飾った、彼の強烈なヴィジュアルを見たときのこと。僕はこのボルチモアクラブ(ビーモア)およびゲットー・ハウスを取り込んだどこまでも挑発的かつ過激な音楽に思わずはっとさせられた。
フィラデルフィア生まれ、現在はベルリンを拠点として、マドンナの”Vogue”よって一躍世に知れ渡ることとなった、ボールルーム・カルチャーに影響を受けた強烈なファッションをまといながら、『Mixmag』によると、彼は「ポップ、パンク、テクノ、セックスの出会い」を感じさせるダンス・ミュージックを提供している。
LSDXOXOの挑発的のファッションおよびサウンドの世界観については、『パリ、夜は眠らない』(原題『Paris Is Burning』)を観るのが手っ取り早い。日本版はVHSテープしかないので、僕はユーチューブに違法アップロードされているスペイン語字幕ヴァージョンを観て(すみません)、なんとなく雰囲気を掴んだが、これがLSDXOXOの参照した世界観だったのかと納得させられた。ニューヨークにおける社会からつまはじきにされたゲイたちによるダンス・バトル、そこにあるフッションや世界観、挑発的で猥雑なサウンドは、まさにLSDXOXOの音楽そのものに通ずる。まずは、”Sick Bitch“や”Mutant Exotic“を聴いて、彼の溢れんばかりの才能に触れてほしい。
どれもクラブを揺らしそうなサウンドであるのだが、同時に、彼がリル・ナズ・エックスやウィロウ・スミス(ハリウッド俳優、ウィル・スミスの娘)を例にあげ、「やつらのようなFucked Up(めちゃくちゃ)な、ジャンルにとらわれないやりかたが大好き」と語っているように、フロアというフィールドに収まりきらないような側面もあり、これからどんな活躍を見せてくれるのかすごく楽しみだ。