レヴューを書くのに一番ちょうどいいのってやっぱりEPなんだよな。とくにダンスミュージックはね、LPだとテンション続きづらいし(聴いてるコッチが)。かといって今回紹介するようなシングルは、書くには短すぎるし、あぁなんもうまくいかないなと、そう思いつつもやはりこの曲が素晴らしいのでレヴューを書くのであります。ちなみにデジタルでのリリース——この<Lehult>からリリースされた12インチ—— はないので、たまにはちゃんとレコ屋に足を運んでディグろう。

リリースをする<Lehult>はドイツのハンブルクに拠点を置くレーベル、やっている音楽は<Bandcamp>にだしているカタログを聴く限りだと、ディープハウス。ハンブルクといえば<Smallville>のようなディープハウスを想像するかもしれないが、あちらのようなほのぼのとした牧歌的な雰囲気はなく、ディープハウスではあるが、同時にテッキーな感覚も有している。DJアッサム、ラッキー・チャームズ、トニー・レインウォーター、エディ・ネス、ジョアン・カセタ、そしてリエム。これらレーベルを担うローテションはどれも通底した感覚があり、まさにレーベル単位で聴きたい。今回紹介する曲が気に入ったならぜひこれらの名前を手がかりにいろいろ探してほしい。

 紹介する『If Only』は<Lehult>のサブというシリーズもので、”DJフレンドリー”や”フロア・フレンドリー”を標榜しながら、チョップ、エディット、スピン、オートメーションといった、DJ的なアプローチで作られたことをコンセプトにしている。そしてやはりと言うべきか、このシリーズは硬派なハンドスタンプのホワイトラベルなのである。

 原曲はシドニー・ヤングブラッドによる「If Only I Could」であり、それを99年にフージョン・グルーヴ・オーケストラがエディットし、さらにリミックスしたものがリエムによる「If Only」だ。暖かなエレピがごく単純なコードを循環させてゆくなか、四つ打ちがずっと続く、キックに低音が抜き差しされ、しばらくは聴いている者をじらしながら、やがてスティーヴ・ルーカスによる色気たっぷりのヴォーカルがやってくる。”もし僕に出来ることがあるのならば、僕はこの世界をより良い場所にする”、まったく理想主義的なフレーズを反復しながら、団結、平和、愛、人種……それらダンスミュージックと馴染み深い事柄にについて見事に歌いあげる。

 いまにおいて、ため息が出てしまうほどのロマンティズムに感じられるし、実際それは少なくとも僕には眩しすぎる。それでもこの素敵な曲は必要だ。いま悲しいことばかりだから、悲しい音楽を聴くのではない、たまには悲しいから楽しくなるために音楽を聴くんだ。人生を良くする音楽なんて絶対にないけど、その日を、日常をを少しでも良くする音楽はある。そのためにこの曲を聴こうじゃないか。

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