Mark Hawkins – The Basement Is Burning

 マーク・ホーキンスが”マーカス・ホークス”のエイリアスを捨てて以来、以降の全てのリリースにおいて出生名であるマーク・ホーキンスを使用することを決断したことはこのコラムで織り込み済みだが、今回ご紹介するこの完璧なクラブバンガーはそのエイリアスである名義でリリースされた。彼がかつての名のもとに作り上げたこのシングルは、”地下が燃えている”という触れ込み通りの、フロア志向で、アンダーグラウンドで、そしてリスナーの心を掴んで離さない中毒性をまとった仕上がりになっている。

ウィル・ソウルが主催する[AUS Music]は、UKスタイルのフィルターを通した上質なハウス・ミュージックを提供し続ける重要レーベルであり、アップルブリム、バイセップやダスキーをはじめとした一線級のDJたちのキャリア形成に一役買ってきた育成学校のようなレーベルでもある。そしてマーク・ホーキンスもウィル・ソウルの長年の友人であり[AUS Music]のローテーションとして数々のトラックを送り出している。

今回取り上げるのは、とりわけタイトルトラックの「The Basement Is Burning」が持っている、瑞々しいほどのピュアなクラブバンガーぶりだ。

硬質なキックと抜けの良いスネアが正確無比にリズムを刻みながら、ピアノのシンプルなコードとフレーズがプログレッシヴに展開していく。そこへ徐々にシンセの厚みが加えていかれるのみのアプローチは、およそポップ・ミュージックにはありそうにもない、クラブ志向ならではのセオリーだ。

この手のトラックに馴染みのない人は「こんなのはただの反復じゃないか、退屈だ」と言うかもしれない。しかし待ってほしい、ハウスミュージックほど”反復”というコンセプトをうまく使う音楽はないのだ、そういう点で「ただの反復だ、それが大切なんだ」と言いたい。そしてマーク・ホーキンスのこのトラックはそのツボを見事に抑えている。

 あるとき、「このトラックをクロージングに用意してるんだけども、まだ使ったことないんだよね」と言っているDJがいた。そして自分は暗いフロアのなか、巨大なサウンドシステムに身をさらしながらあのフレーズがあらわになる様を想像してしまった。そのときこのトラックの魅力に気づいた。

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