Shanks&Bigfoot『Sweet Like Chocolate』

Single

 UKガラージというジャンルのなかでもクラブの枠を飛び越えヒットしたレコードがいくつかある。このジャンルが隆盛を誇った00年代前後のクラブでスピンされてロンドンの夜を彩った音は、なにも怪しい地下の防音室だけで機能する音楽ではなかった、ということだ。

それをUKのチャートでナンバーワンを獲得するという形をもって示したのが、今回ご紹介にあずかる『Sweet Like Chocolate』 ”チョコレートのように甘い”とはよく言ったもので、ミュージックヴィデオを拝見する限り、これは純粋なダンスミュージックというよりも、UKガラージのビートを拝借した10代向けの”甘い”ポップソングにも聴こえる。

シャンクス&ビッグフットのふたりがドゥーラリー名義でドロップした『Straight From The Heart 』はよりダンサブルでクラブ志向だし、こちらと比較すると一聴したときは”音がスカスカじゃないかな”と思ったりもしたけれど、なんども聴いているうちにチャーミングな魅力があるとも思った。なんというか来るものを拒まなフレンドリーさがある。これについてはサイモン・レイノルズがUKガラージにおける”女性的”な感覚として巧く書いた文章がすごく参考になる。彼が言いたいことをざっくばらんに要約するとつまり”女の子が楽しめてはじめて良い音楽なのがUKガラージである”、ということなのだが、それを見事に体現しているのがこの曲ではないかと自分は強く思うのだ。

 しかし、<Spotify>でUKガラージのプレイリストをいくつか見たところ『Sweet Like Chocolate』をいれていないことも多く、つまりそれはUKガラージにおいてこの曲の価値が時折見過ごされてしまっている、ということではないだろうか。この曲をいれないという理由が自分には今ひとつわからない、だって多くのUKガラージと称したプレイリストには、そこにアートフル・ドジャーダニエル・ベディングフィールドも据えているというのに。だからこそ当マガジンのUKガラージ・プレイリストでは『Sweet Like Chocolate』に敬意を表して、この甘くて最高な曲を記念すべきスターターに据えようと思う。

ちなみに余談ではあるが、ディスクロージャーはUKガラージを参照する以前、このジャンルついてなにも知らなかったけれど『Sweet Like Chocolate』だけは別だった。また、ジェイミー・XXはブリクストンでの6時間にも及ぶロングセットでいくつかのUKガラージをスピンしたが、そこに『Sweet Like Chocolate』がセットリストに連ねていた。また、グライムのストームジーがヘッドライナーを務めたグラストンベリーで、彼は『Sweet Like Chocolate』をカヴァーしたのだった。

 何年も経ったいま、数々のミュージシャンやDJたちがこの曲をカヴァーしスピンしているという事実は『Sweet Like Chocolate』が素晴らしいことを如実に示すと同時に、サイモン・レイノルズの書いた”女の子のセオリー”、つまりこのクオリティ判断の試金石——それはUKガラージにおける根底の考えだ——がいかに優れているかをも証明している。

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